昨年度(〜平成19年3月31日)の研究実施計画に対応して実績をまとめると以下のとおりである。 (1)理論研究: ローカルマネジャーのキャリア形成に関する研究の推進に必要な内外の文献を改めて丹念にサーベイし、キャリア概念ならびにソーシャル・キャピタル概念を整理する。 参加メンバーを拡大しながら計4回の勉強会を開催し、そこで得られた知見の一部はVossら(2006)、高橋&竹之内(2007)や、平成19年1月に開催された研究会(於高崎経済大学)での齋藤;の報告に反映されている。 (2)インタビュー調査: ローカルマネジャーの語りから彼/彼女らの主観的キャリアを探るというメソッドを採用するからには、インタビュー調査が欠かせない。 平成19年3月に齋藤他1名が東南アジアに展開する日系企業6社でローカルマネジャーのみならず、日本人赴任者、そして現地採用された日本人社員ヘインタビュー調査を行った。離職率が高い同地域で現地採用の日本人社員は現地法人内で「ナレッジ・トランスフォーマー」(原田、1999)の役割を果たすと考えられ、(3)との関連でも今後さらなる調査が必要であろう。 (3)ネットワーク分析: ネットワークによってもたらされる技術的な知識、助言や心理的サポートといったものがキャリアサクセスに重要な影響を及ぼすことから、インタビュー調査と並行してそのインタビューイーの他者との関係性を視野に入れたネットワーク分析モデルの開発を目指す。 齋藤が中心となり勉強会を計8回開催するとともに、代表的な分析ソフトであるUCINETやPajekを入手したが、まだ成果は出ていない。しかしながら、学生ネットワークと学業成績ならびに就職活動成果といった実験(練習)を積み重ねたうえで、企業内ネットワークの分析へと進めていく予定である。
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