研究課題
基盤研究(C)
本研究課題の目的は、目系多国籍企業のローカルマネジャーのキャリア形成をネットワークの視点から捉え、そこから得られた知見を企業研修にも活かすことにあった。日本人海外赴任者は帰任後に本国親会社の変革をもたらし得るが(齋藤、2008a)、他の現地法人との内部競争にさらされるなか(高橋・竹之内・齋藤、2007)、内部競争で優位なポジションに立てるよう、また現地に適応できるよう必要な現地法人での知識の蓄積の重要性が高まるにつれて(竹之内、2008b)、ローカルマネジャーのキャリア形成問題は本人にとっても組織にとっても見逃せないイシューとなってきた(山田、2008)。キャリアにおける学習の多くが、仕事環境における同僚、部下、顧客、上司といったメンバーとのフォーマルおよびインフォーマルなつながりからもたらされると指摘する先行研究と同様に、まわりの人々のフィードバックなどが、いくつかの経験の中から特定の経験を、成長を促す経験として位置づけることにつながっていることが本プロジェクトでも確認された。したがって、そうした気づきを促すようなネットワークをローカルマネジャーに提供することが日系多国籍企業に求められるが、現地採用の日本人社員の活用は知識移転の観点からも有効であると考えられる。ローカルマネジャーと日本人赴任者との間で知識を転換する「トランスフォーマー」として機能し得るからである。なお、インフォーマル・ネットワークでさえ体系的に構築可能であるとの主張に基づき、企業研修への応用を目指したが、センシティブな問題ゆえ困難を伴った。さらなる改善が必要である。
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