研究課題
基盤研究(C)
平成18年度は、日米中韓において、携帯電話端末メーカー、通信事業者、小売/卸業者、デザインハウス、チップ/ソフトウェア・ベンダーに対してインタビュー調査を行った。同時に、関連する資料やコンファレンスを通じ、基本的な情報収集を進めた。こうした調査を通じて、日米中韓の携帯電話産業における端末の開発活動や端末流通のパターンを相互に対比させ、端末開発活動について検討を行った。その結果、地域間でコア部品(チップセット)から端末流通に至るまでのサプライ・チェーンの相違とともに、地域間にわたって共通の動向も確認できた。日本国内と比べ、とくに米・中においては、企画や開発のプロセスが特定の通信事業者に依存する傾向はほぼ見られず、様々な通信事業者向けに汎用性の高い端末が開発されている。一方、これらの地域においても、一部の日本メーカーや米中韓メーカー(とくに韓国メーカー)が、通信事業者の要望によりカスタマイズした端末(operator-branded phone)を供給しつつある。顧客の通信事業者を製品企画プロセスに巻き込みながら、顧客に特有の仕様(例えばアプリケーションやインタフェース)の端末を開発するケースが出てきているのである。ただし、これらの企業では、顧客の通信事業者に関わらず、一定の企画・開発プロセスが採用される傾向にある。こうした汎用的なプロセスを通じて、上流段階の企画プロセスで顧客に固有の仕様要求に関する知識を吸収する一方で、製品設計以降のプロセスでは企業・機種間に共通の通信コアや製品設計(技術/製品プラットフォーム)を活用して開発が行われる傾向にある。こうした開発活動において顧客に固有の知識を吸収する領域や技術/製品プラットフォームとして共通化されている範囲に違いがあるという点で、日・米間では端末開発活動に違いが生じている可能性が高いことが、ある程度確認できた。
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