日本では、第二次世界大戦後、急激な高度経済成長により、個人の所得は向上した。また、民主主義や個人主義の思想が普及したことにより、個人は自分の生き方を自分自身で探さねばならなくなった。それは、自由という重要なキーワードを得たことによるが、その1つの憧れともいえる具体的なモデルとしてアメリカが登場した。それは教育から娯楽に至るまで、日本国民の生活に対して大きな影響を及ぼし、1つの目標となった。 今日のように物質的に満たされた生活水準が得られるようになると、個人としての幸福な生き方を1人ひとりが考える余裕が生じてきた。また、これまでの男女間の役割分業のスタイルに、個人1人ひとりの行き方を重視する動きが適合しなくなってきた。豊かな社会になると、生き方において、かつてのように欧米諸国に追いつこうというキャッチアップ型の目標に向かって邁進するという状況ではなくなった。そして自らの進むべき方向を自己責任の下にデザインするものとなったのである。それは、働く人々個人の行き方にもあてはまることである。そこで、自分のライフプランは、自分で設計し、自己責任の下で実行することが求められている。 企業の論理で非正規労働者を求める傾向が高まる一方で、自らのライフプランで非正規労働に従事する者もいるが、総じて低い賃金・処遇を余儀なくされているのが現状である。日本においては、終身雇用制への回帰が見られるようになってきた昨今、諸外国との日本の非正規労働者の賃金・能力開発の現状を再度比較し総括してみる必要がある。
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