昨今、非正規労働者、とくに派遣労働者に対するいわゆる「派遣切り」が問題化している。「雇用か賃金か」といった二者択一の論議はこれまでもなされてきたが、非正規労働者の賃金ならびに能力開発問題以前に雇用の確保が危機的状況に陥っている。とはいえ、本研究では、現在話題となっている非正規労働者の雇用問題に直接言及するのではなく、非正規労働者の賃金ならびに能力開発の有効化に関連して、第二次世界大戦後から現在に至る日本の賃金・人事処遇制度の史的展開を中心に文献研究を行った。 また、日本では、パート・アルバイトのおよそ4 割以上が小売業や外食産業に従事している。とくに大学生の8割がアルバイトをし、その6 割が補助的な軽労働に就いている。実際、総務省「労働力調査」によれば、卸売・小売業、飲食店でのパートタイム労働者の比率は、平成2(1990)年の20.5%から平成13(2001)年には32.4%へと増加している。いまや同業界では3 人に1人がパートタイム労働者であり、外食産業に至っては、パート比率は全体で81.2%と群を抜いて高いため、研究対象として取り上げる意義があると考え、日本を代表するファスト・フード(fastfood)A社(匿名希望)の店舗(東京・札幌)の非正規従業員(とくにパート・アルバイト)に対するヒヤリング調査を通して実態調査を実施した。
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