久保田=斎藤=竹原は、企業の負債節税効果を考慮し、従来のトービンのqについて、企業の真の収益性指標を識別するため、レバレッジ効果を抽出したUnlevered qを2セクターRBC均衡モデルを用いて理論的に演繹し、この新概念の使用を提言し、さらに日本企業についてこれを実証することにより、税金のある場合にはこれが1を下回り得ることをSummersに続き、明らかにした。この基本モデルはさらに一般均衡モデルに拡張された。また、久保田=斎藤=竹原は、Krocker and Slemrodの契約理論モデルを元に、経営者報酬最大化行動から生じる粉飾の可能性の存在を理論モデルにより明らかにした。 久保田=竹原は、早稲田大学須田一幸氏との共同研究において、企業のその他の包括利益と株式異常収益率との関係を明らかにした。また。久保田=竹原は、日次データを用いて、企業のシステマティックリスクがファマ=フレンチの3ファクターに加え、流動性ファクターとコントラリアンファクターの2ファクターあることを明らかにした(2009年2月アメリカ個人投資家協会最優秀論文賞受賞)。 久保田=徳永は、慶応大学和田賢治氏との共同研究において、企業の株式収益率が、米国と異なる時系列構造を持っていることを発見し、上の研究と整合的であるコントラリアン傾向が、企業のリターンの時系列変化に見られることを明らかにした。 これらの諸研究の理論的成果および実証結果より、資本市場における情報の非対称性が株価に与える影響、その下での企業の質の向上のための経営者報酬要因の設計、資本市場における情報伝播環境の整備、さらに税制のあり方などについての規範的提言を行うことが出来る。
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