平成19年度は、質的データベースに関しては、金融サービス業に属する東証一部上場の信販2社と非上場の銀行系カード会社1社を対象に、昭和50年から平成19年までについてデータベース化を図った。まず日経テレコム21を利用し、各企業について、決算報告、新製品発売、役員交代などの記事を除外し、戦略および組識の変革に関連のある記事のみを検索した。同時に、記事本文の分析を行い、各変革に関する分類と記述を行った。まずそれぞれ4つに分けられた「変革クラス」と「変革レベル」という2つの次元から、各変革を16のセルに分類するグリッドを作成した。 量的データベースに関しては、平成18年度に収集したデータに基づいて、日本の金融サービス業に規模の経済性が存在するかどうかに関する実証分析を行った。その結果、規模の経済性が作用している可能性が高いことが発見された。どの年度でも基本的な傾向は変わらず、Cobb-Douglas型の最も単純な定式化では貸付獲高と口座数に、トランスログ型の定式化では貸付残高に規模の経済性を見出すことができ、統計的に有意な結果が得られた。また、貸付残高を生産量とみたモデルの方が総じて関数のフィットがよく、口座数のモデルよりも結果の信頼性が高かった。 さらに、日本の金融サービス会社がどのような戦略および組織形態でもってアジア諸国に進出したかについての研究の準備段階として、米国と英国の主要な信用情報機関の多角化・グローバル戦略(特にアジアへの)についての資料を収集し、分類・整理した。
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