本年度も引き続き談合に関する資料を収集・分析した。談合には、官製談合と民間業者間談合がある。前者は官庁が予定価格などの機密情報を受注側の民間企業に漏らし、民間企業側がそれらの情報に基づいて受注企業などを決定するという仕組みである。その際の官公庁の動機は、主として2つある。第1に、機密情報提供という違法行為をあえて犯しても、利用者のために最善の施設やサービスなどを提供したいという動機である。官公庁側は適正価格や技術を決定する際に、業者の情報提供という協力が必要であり、そこから両者の癒着が生じ、談合が成立してしまう。また、単に入札価格だけによる業者選定では、機械的に最低額の入札業者が受注者になることのリスクもある。そこで、発注物やサービスなどの品質を保証するため、また、業界の保護育成のため、あらかじめ行政指導的に談合がなされるのである。第2に、官公庁が組織として、「天下り」先を確保するために、業者に発注情報をあたえる。(なお、ここでは公務員の収賄罪にあたるような、自己利益のための情報リークは官製談合とはみなさない。)次に、受注側の企業グループの動機は、ある公共事業の受注から得られる利益を共有することである。同業者が一種の価格カルテルを結成して、各社が入札情報を共有し、その結果あらかじめ落札業者が決定される。そして、最低価格入札業者は、「業界の権力者」により決定されるのである。そこには、企業倫理からの逸脱、独占禁止法の違反がある。ただ、最近では、リーニエンシー制度が導入され、談合を内部告発した中心業者には、課徴金などが免除されたりする救済措置がとられるようになった。以上のことを詳細に研究をした。 なお、特に関心を持ったのは、「業界の権力者」の生成過程である。今後はそのような業界人の倫理観を追求したい。
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