本年度は、定性分析を中心に調査を実施した。対象としては、(1)ダイバーシティと戦略的かつ全社的に取り組み始めた企業の事例、(2)ダイバーシティにはまだ取り組んでいない企業、(3)ダイバーシティの取り組みを行っている日本企業9社の比較、の3つである。(1)にかんしては、欧州松下電器産業株式会社の協力を得て、多国籍チームにおけるダイバーシティマネジメントと、それがビジネスパフォーマンスにつながるプロセスを、ヒアリング調査によって明らかにした。メンバーの行動、リーダーシップ、多様性をいかす組織的インフラについて検討した。こうした組織的インフラは、国内における女性の登用についても共通のヒントがある点が明らかになった。また、多様性と企業としての統合(統一性)とのバランスをいかにはかるかについても、検討を行った。本内容については、草稿の執筆段階にある。(2)については、日本企業A社に調査協力のもと、女性や中途採用の登用がなぜすすまないのかという点を明らかにするため、従業員が暗黙のうちに共有している職場慣行、業務プロセス、職場の規範に関して、特定の部署にターゲットを絞りヒアリング調査を実施した。同時に、女性や中途が活躍する部署を取り上げ、成功事例として、他の職場との違いも分析した。(3)にかんしては、公刊資料や担当者から得た内容を分析し、9社の取り組みを、目的、取り組みのきっかけ、トップの関与、現行の課題などを比較検討した。これに関しても草稿執筆中である。
|