平成19年度は、人材の多様性の捉え方の日米比較を行った。職場における人材の多様性の長い歴史を持つ米国において、ダイバシティの捉え方がどのように変遷してきたのかを、文献研究をもとに検討した。とくに、ダイバシティを、雇用機会均等やアファーマティブ・アクションの対象から企業価値へと結びつけていくように、変化していくプロセスを3つの時期にわけ分析した。それぞれの時期における雇用者(あるいはトップマネジメント)のスタンスおよび、キーとなった研究・研究成果を示した。さらに、ヒアリング調査から、日本におけるダイバシティの捉え方の特徴を米国のそれと比較し、次のことを明らかにした。 米国では、1980年代、アファーマティブ・アクションに対する反発から多様性を重視、さらには1990年代のダイバシティ・マネジメントへと転換が起こった。そこではダイバシティがアファーマティブ・アクションといかに異なるのかが強調されていた。しかしながら、日本では、2007年現在においても、いまだにポジティブ・アクションに着手する企業がみうけられ、ダイバシティをポジティブ・アクションからの脱却ととらえる企業は多くない。つまり両者が明確に区分されていなかった。 また、ビジネス目的を強調することで、ダイバシティ・マネジメントへシフトが起こった米国と比較し、日本は、アファーマティブ・アクションと多様性重視が共存している段階にあった。ダイバシティを変革のツールとして用い組織のパラダイム転換を促すという試みは、多くは企業における「働き方改革」=長時間労働の是正といった社内のワークファミリーバランスの活動の一環としての実施にとどまっている。人材の多様性を企業業績向上にむすびつけようというビジネス目的としての活動にまで至っておらず、トップマネジメントの関与は限定的であった。
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