本研究の目的は、1.「仕事論」の着想を事例に則して調査研究への適用可能性を実証すること、2.日米自動車工場の事例調査を通じて日本の競争力の組織的基盤を明瞭にすることであった。 1.「仕事論」の事例研究への適用可能性について。冊子体の成果報告書(様式C-18)に収録した「アメリカ自動車工場の苦闘」は「仕事論」の適用により、工場の方針管理の体系、PDCAの管理の実情、職場労使関係の全貌を、従来の研究に比べて、より正確に記述することに成功した。生産システム論で永らく不明瞭であったアメリカ自動車工場の「チームコンセプト」の内実とその困難が正確に記述された。 2.日本の競争力の組織的基盤について。冊子体の成果報告書(様式C-18)に収録した「国際競争力の組織的基盤-日米自動車工場の比較-」は日本の工場の方針管理とりわけ、品質管理に即して記述し、その記述から自ずから表現される日本の自動車工場の競争力は、(1)内部労働市場を通じての高い技能の生産労働者の蓄積、(2)生産労働者と生産技術者、設計技術者との組織間の連携の円滑さ、に根拠付けられている。ただし、非典型雇用の増大は労務費の低減をもたらすけれど、上記の比較優位とトレードオフの関係に立ち、その最適点の探求は日本の工場の人材管理の数要点をなしている。
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