2006年度の研究実績は以下の通りである。 主としてイギリスの中央政府、地方政府の行財政改革について、(1)理論、政治思想的背景、(2)これまでの取り組みの中で、公共部門における競争原理導入(強制競争入札による民間委託、Best Value、PFI等)に関する分析と評価を中心に調査研究を行った。 これにより、(1)「小さな政府」を志向したサッチャー、メージャー保守党政権時代における民営化、強制競争入札、エージェンシー化、PFIなどの一連の改革によっても、実際には全体の財政支出の減少には至らなかった、(2)NPMの特徴として説明されることの多い「Devolution」(権限移譲)について、保守党政権時代では、中央と地方政府間の関係において中央政府の集権化がむしろ強まった、(3)現在、日本において国、地方自治体で取り組まれている「市場化テスト」はイギリスの保守党政権時のCCTを参考にしている点が少なくないが、1997年以降、ブレア労働党政権で実施されてきたBest Valueにおける取り組みにおいての方が民間事業者の公共サービスに関わる割合が高くなっている、ことなどが明らかとなった。 PFIについては、労働党政権に移行後も積極的に取り組まれてはいるものの、一方で、(1)PFIのパイオニアであるイギリスにおいても、リスクの金銭価値化に対する考え方、手法に定まったものがない、(2)現状では債務のオフバランス化につながっていること、などの課題を抱えており、PFI運用の手法、ルールにおいてさらなる改善の余地があることが明らかとなった。
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