本研究では、公共経営における競争原理導入のあり方について、まず理論的フレームワークの整理を公共経済学からの視点で行い、さらに具体的な行政関与のあり方に関する判断基準の必要性について言及した。 次に公共経営における競争原理導入政策のうち、特にPFI(Private Finance Initiative)と市場化テストに焦点を絞り、研究を行なった。日本においても、約340件ものPFI事業が実施され、PFIの持つ利点ばかりが注目される中、PFIという仕組みが持つデメリットについても詳細に検討し、今後の我が国おけるPFI政策のあり方について修正点を考察した。具体的には、(1)イギリスでは会計上、これまで政府債務としてPFI事業に関わる後年度支払い額がすべて計上されてこなかったことがPFI推進の大きな原動力となってきた、(2)政府よりも信用力が低い民間事業者に事業資金を調達させることはVFMの観点からコスト高になる。PFIではこのコスト高を相殺してさらに費用削減可能とされるが、その計算の根拠となるPublic Sector Comparatorの算出方法が割引率の適用やリスクの金銭価値化が曖昧である、ことなどが明らかとなった。そしてPFI事業はPrivate Financeではなく、Public Financeを活用し、民間事業者に自由度を与える現在の仕組みと組み合わせることの重要性を指摘している。 第2章においては日本の市場化テストの留意点と課題を主に官民コスト比較の観点から考察した。直接費と間接費の区分けは相対的なものであること、官民コスト比較におけるフル・コスト・アプローチと可避コスト・アプローチの特徴とメリット、デメリットを示した。コスト削減の実現のためには、発生主義会計とともに発生主義予算の重要性を指摘するとともに、官民コスト比較後の予算措置上の課題についても考察を行った。
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