従来の再保険研究が、実務的な要素を多く含んだものであるのに対して、本研究では、再保険が元受保険会社の資本を節約するという意味で、ファイナンスの一手法としての側面に絞った研究を行った。とりわけ平成18年度においては、再保険研究の主流ではないが、今後重要となるはずの生命保険再保険について研究を進めた。その結果、生命保険会社の経営者が「資本のマネジメント」に対して関心が薄いことが明らかになった。またその理由は、生命保険会社の資本概念の希薄さであり、それは翻っては、わが国産業組織の特徴と深く結びついていることがわかった。 ところで、わが国への生命再保険の導入は、予想に反して古いものであり、概念としてはすでに明治末期には知られていた。その後、ミュンヘン再保険会社によって標準下体についての再保険が具体化しはじめたが、結局、外国企業に頼ることなく、自国内に生命再保険会社(協栄生命)を設立することで生命保険再保険を開始した。 このような古い伝統にもかかわらず、現在の主要生命保険会社は、ほとんど生命再保険に出再せず、またそれに対する関心もきわめて薄いのである。これまでにおこなった資料調査およびインタビューによって、わが国における生命保険再保険の歴史と実情について、ある程度明らかになった。歴史的な経緯については、18年10月にスイスで開かれた国際会議で報告した。報告の内容をさらに洗練して、なんらかの形で公表する予定である。なお研究を進めてゆく過程において、わが国の生命保険再保険の統計数字が未整備であることがわかった。かなり難しい作業であるが、残された研究期間で出来る限り長期のデータベースを作成したい。
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