平成18年8月中旬から9月初旬にかけ渡英し、調査協力者であるエジンバラ大学のジョン・ドーソン教授とともに、ドラッグストア・チェーン大手のブーツ社のスコットランドエリアのカスタマー・ケア・マネジャーにインタビュー調査を実施し、顧客サービス向上のためのプロジェクトとロイヤルティ・プログラムの実態について情報収集を行った。また、流通企業が情報技術を用いてどのように顧客関係管理を行っているかについて日英両国にて実態調査をするために、ドーソン教授とともに質問紙調査を設計した。 平成18年11月に国内で質問紙調査を実施した。調査対象企業は市販の上場企業職員録データベース及び企業年鑑データベースから流通企業を選別し、経営企画もしくはそれに相当する部門の部長、事業部長に対して郵送の形で配布した。送付先896票に対し、308票の回答を得た。一方、英国において、平成19年1月初旬から3月にかけて、ジョン・ドーソン教授の協力を得て、リサーチ会社を通じて電話インタビューによる、同目的の調査を実施した。質問項目は日本で実施した質問紙の内容を電話用に編集したものを用いた。調査対象として選定した流通企業410社のうち、電話調査での回答が得られたのは、92社であった。 日本での質問紙の調査結果は、顧客データのデータベース化については70%以上の企業が導入、ロイヤルティ・プログラムについても70%近くの企業が実践していることが明らかになった。流通企業にとり、取引データの利用へのインセンティブは高いが、情報システム投資に対しては、満足度が低いという結果が得られた。また、顧客データの利用度として優良顧客の識別を志向しているが、データ・マイニングの実施についてはまだ普及度が低いことが明らかになった。
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