研究概要 |
本研究の実施最終年度である本年度は、昨年度収集した資料を整理し、その考察にもついた成果を論文として発表するとともに、あらたに英国現地調査を行い、前年度の成果とともに最終報告書としてまとめる作業を行った。 とくに本研究の中心的な対象であるユナイテッド・コープがコーペラティブ・グループとの合併を2007年初めに電撃的に発表し、7月にそれが実現するという重大な事件が起こったことから、急遽研究計画を一部変更し、予期せぬ出来事であったこの統合について調査を行い、イギリス協同組合の全国統合化を考察した。 学会報告「イギリス生活協同組合の統合・連合化-コーペラティブ・グループとユナイテッド・コープ」(日本協同組合学会27回大会)はその第一報としての報告であり、論文「イギリス生協と連合組織-その組織・事業・統治」(『協同組合研究誌にじ』。621号)は、合併直前のコーペラティブ・グループの組織と事業をまとめるとともに、ユナイテッド・コープとの統合によって今後もたらされるであろう、その影響を展望した論文である。 また、"Red Store Yellow Store,Blue Store and Green Store:The Rochdale Pioneers and their Rivals in the Late Nineteenth Century:"(Journal of Co-operative Studies)および「『労働』をめぐる協同組合のビジネス・エシックス」(『ビジネス・エシックスの新展開』関西大学経済・政治研究所)は史的分析によって、現代協同組合の抱える課題を指摘した論文、「CSRと中小企業:非常利・協同・社会的企業と関連して-英国流通業の事例紹介」(『関西大学経済・政治研究所セミナー年報2007』)は現状分析からの接近である。 こうした諸論考を通して、イギリスの協同組合運動がロッチデール公正先駆者組合の設立以来160年以上をかけてたどった全国統合化への過程とその現状、そしてそのなかで生まれ、今なお課題となっている諸問題を、とくに社会的責任経営(労働問題への対応、フェアトレードの取り組み、地域政策等)の観点を中心として、明らかにすることができた。
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