研究概要 |
管理会計とリスクマネジメントの統合について、(1)先行事例について文献サーベイを行うとともに、(2)金融機関について行ったフィールド調査結果をまとめ、(3)会計プロフェッションが管理会計とリスクマネジメントの統合にむけて発揮しているイニシアティブについての聞き取り調査を行った。具体的には、(1)先行事例に関する文献サーベイでは、戦略管理会計とリスクマネジメントの展開について整理し、それぞれの技法間の構造的関係について多様なリスク概念が用いられていることに留意しながら一定の理解を獲得することができた。とくに、リスク概念として、戦略依存リスクとそうではないリスクを区別することが重要であるとの知見が得られた。(2)邦銀における管理会計とリスクマネジメント統合状況に関するフィールド調査では、東京三菱銀行米州本部(当時)に関する調査結果をまとめ,(1)の成果とあわせてその一部を論文として発表した。ここでは、制度環境の変化への対応として内部統制の充実が必要となり、内部統制のデファクトスタンダードであるCOSOのフレームワークが明示的な戦略の存在を自明視していたことが直接の契機となり、戦略明示化手段としてBSCの導入がはかられたこと、このような導入経緯がガバナンスの向上に戦略管理会計が用いられることにつながったこと、戦略管理会計とリスクマネジメントの統合がこの機会に進められたことが、明らかとなった。(3)会計プロフェッションの動向については、オーストラリアおよびマレーシアにおけるリスクマネジメントを考慮した戦略管理会計の実施状況について聞き取り調査を行った。
|