本研究の目的は、非営利組織における管理会計システム導入の促進要因ならびに阻害要因を体系的に抽出し、非営利組織に適合した管理会計システムの構築を提示することである。この目的を達成するため、文献研究とケースリサーチにより、導入の促進要因と阻害要因をまず析出した。トップの明確なコンセプトとサポート、推進役、組織カルチャーの醸成、組織成員の導入プロセスへの参加などがこの要因として析出されていた。 文献研究とケースリサーチに基づいて、次の研究局面はアクションリサーチのサイトの検索であった。結果的には、この研究開始以前からの2つの病院をリサーチサイトに選択せざるを得なかったが、アプローチしたサイトが管理会計システム、特にバランスト・スコアカードの導入に消極的であったのは、組織成員のコミットメントを得難いと考えていることであった。確かに、民間の営利企業と比較すると、非営利組織、特にパブリックセクターでは組織成員の組織に対するコミットメントが低いのかもしれない。しかし、組織カルチャーの醸成や組織成員の参加はコミットメントを高めるためであり、これらの要因を含めて、今後は「コミットメント」の要因に更に注目したいと考えている。 また、これまでの研究で明らかになったこととしては、バランスト・スコアカードにおける顧客の視点を「社会の視点」に置き換えるのが非営利組織では妥当と考えられる。病院では、機能分化が進む中、「病院の社会における役割」から病院の戦略課題を設定する必要がある。また、行政についても、「市民社会における役割」から戦略目標を設定すべきである。 平成18年度の研究成果は以上の通りであるが、平成19年度はアクションリサーチを中心に研究を継続することによって所期の研究目的を達成したい。
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