本研究の目的は、非営利組織における管理会計システム導入の促進要因ならびに阻害要因を体系的に抽出し、非営利組織に適合した管理会計システムの構築を提示することである。この目的を達成するため、平成18年度には、研究計画どおり、文献研究とケースリサーチにより、導入の促進要因と阻害要因をまず析出した。この結果、非営利組織では、戦略思考が求められているなか、旧来の中期経営計画や予算管理ではなく、バランスト・スコアカードが適合しているということで、2病院についてアクションリサーチを開始し、平成18年度にはすでにシステム設計を完了させ、運用段階に入った。 平成19年度には、この運用を継続し、運用の成果を分析することにより、非営利組織における管理会計システム導入に関する促進要因と阻害要因を析出するとともに、この結果をシステム設計や運用にフィードバックした。また、このフィードバックに際しては、ドイツ語圏の研究者と共同研究プロジェクトを立ち上げることになった。 今後、これらの研究成果は、公開の条件をリサーチサイトと詰めた上学会やジャーナルに順次公開していくが、学会に対する重要な貢献としては以下を上げることができる。 (1)アクションリサーチが管理会計の重要な研究方法であることを示したこと (2)この方法がシステムの変革を生み出し、イノベーション・アクションリサーチとなったこと (3)具第的には、バランスト・スコアカードにおける「顧客の視点」を「社会の視点」に置き換えることが非営利組織では有効なことを明らかにしたこと (4)システム導入の促進要因と阻害要因を体系的に示したこと
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