国内外企業におけるCSR会計情報の収集分析を過去2年間実施してきたが、今年度も継続し、世界レベルでのCSR会計の現状を調査分析した。東証一部上場企業を中心に分析し、各国比較を行うとともにその成果の一部を反映してディスカッションペーパーにまとめて、カナダの国際学会で報告した。この結果、日本のCSR会計情報開示は、社会情報に関しては、かなり進歩しているが、会計情報はまだ不十分であること、投資家を中心とするステイクホルダーの情報ニーズには概ねこたえているものの、一部改善の余地があることが示された。 マテリアルフローコスト会計を中心とするCSR会計フレームワークの国内企業への有効性分析についてインタビュー調査を中心に行った、その結果、マテリアルフローコスト会計を中心とするCSR会計フレームワークが国内企業にとって有効であることが明らかとなった。さらに、ドイツ型のマテリアルフローコスト会計との比較検討を行い、情報システム構築を重視するドイツに比べて、日本の実務は生産プロセスにおけるカイゼン指向という特徴があり、このことが日本企業の実務の発展に貢献したことを示した。 CSR会計の基礎としてのアカウンタビリティ理論、正統性理論、意思決定有用性理論を検証し、アカウンタビリティ理論の有効性を示すとともに、このことがGRIの「サステナビリティ報告ガイドライン」でも実証できることを示した。一方、CSR会計に関しては、付加価値会計などいくつかの先進的な事例が見られるものの、理論的な体系を実務に反映させるにはいくつかの課題が残されていることが明らかとなった。
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