本研究課題「フランスにおけるコーポレート・ガバナンスと管理会計の連携に関する研究」は、まずコントロールのパラドックス的属性の認識とその対応策をめぐる議論から始まった。これは北米でのバランスド・スコアカードの議論の裏返しの関係にある、その議論の延長線上にフランス独自のマネジメント・ニントロールのフレームワークが新しく構想されるようになった。今年度は、そこで構想されているマネジメント・コントロールのフレームワークが最近話題のガバナンス(企業統治)問題をどのように捉え、それをどのような形で枠組み内に収めようとしているのかを探り、その意味内容を明らかにすることを一つの目的としてきた。 研究の成果を端的にまとめるならば、次のようになる。つまり、コントロール論がガバナンスを包摂しようとする場合、内部統制論の新しい展開が契機となった点に注目しなければならなかった。そして、フランスのケースを素材にしつつ、ガバナンスが内部統制として現れる側面に注目した。そうすることによって外部からの法としての強制的な内部統制制度の規定は、パラドックスをマネジメントする《コントロールのガバナンス》を可能とする一方で、リスクのマネジメントを進める《ガバナンスのコントロール》を自発的な形で内部から導き出すことができることを明らかにした。 要するに、本研究の実績としては、フランスのマネジメント・コントロールを素材にすることで、上記の《コントロールのガバナンス》と《ガバナンスのコントロール》とが結びつく仕組みを描き出すことによって、企業統治、内部統制およびマネジメント・コントロールの関連をパラドックスとリスクという概念を組み入れることによってうまく整理できるようになったことである。
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