本年度(平成18年度)における研究実績は、つぎの2点にとくに集中された。 (1)退職給付会計基準に関するわが国のフレームワークを明らかにすること、ならびにその問題点を明確にすること。この作業をつうじて本研究テーマの基本的な接近方法について検討すること。 この点は、すでに示した研究成果のうち3回の連載の「会計時評」で展開されたように、3つの側面から検討された。すなわち、財務報告をめぐる内部統制問題、財務報告をめぐる経営者の意図、財務報告と倫理問題である。これらは、いずれも直接には本研究テーマに関連するものではないが、年金基金に代表される機関投資家が、財務報告にどのような位置をしめているのか、また財務報告のフレームワークにどのように影響を及ぼすのかについて、その方向を提示した点で意義がある。 (2)最近、退職給付の会計基準をめぐる米国および国際会計基準の改革計画が、明確に提示されているが、その概要を示し、それがどのような意味で従来のフレームワークを変更するのかについて再検討すること。 これは、米国のFASBとIASBとのコンバージェンス作業の方向と意義を明らかにしたものである。これらは、年金基金そのものの会計でなく母体企業が年金基金をどのように表示するのかに関する財務報告の問題であるが、年金基金そのものの運営、とりわけ投資の在り方に影響すると予想される。その意味でも、この研究実績は、本研究テーマにとって意義あるものと考える。なぜなら、この方向は、これまでの年金基金の母体企業の会計のフレームワークを抜本的に変更するものであるからである。
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