現在、我が国において環境会計は多くの企業に導入されるようになっている。しかし、普及している環境会計は、環境会計情報を集計した一覧表という位置づけにとどまっている。本研究は、環境会計に情報要素間に有機的な計算体系を内在させた「会計」に発展させる方途を考察することを目的とする。このため、環境会計へ複式簿記を導入し、ストック情報としての貸借対照表を導き出す必要があるという認識のもとに研究を進めた。なお、研究を具体的に進めるために、研究対象を自治体の環境会計に絞っている。 研究1年目においては、理論研究(環境資産、環境負債、環境資本等に関する内外の文献調査)、自治体の環境会計担当者と業績評価担当者に対するアンケート調査等を行うとともに、環境会計担当者との意見交換を行った。研究2年目においては、まず、前年に行ったアンケート調査の集計をした。そして、作成した調査結果冊子については自治体宛送付した。さらに、マインツ(ドイツ)等を訪問し、市役所環境担当者との意見交換を行った。これらの結果について、日本計画行政学会で報告を行った。 本研究により得られた成果と課題は以下のとおりである。まず、内外の先行研究のサーベイを行い、各研究の長短を考察した。そして、内外の実務担当者等との意見交換やアンケート調査結果も踏まえて、独立行政法人における負債の考え方をとり入れた環境貸借対照表を提案した。研究結果は別添「研究発表」に記した通り論文として取りまとめた。 今後、内外の実務家等との意見交換から得られた知見や、学会発表で得られたサゼッションを踏まえ、環境資産、環境負債概念のより一層の明確化を行う。また、自治体のみならず様々な組織体における、環境貸借対照表の構築に向けた研究を行う。
|