本年度は、研究課題に関する実証的な研究を行うための準備段階として、非財務情報の利用についての実態調査や、過去の実証研究に関する国内外の文献の収集・渉猟を行った。その結果として、国内ではバランス・スコアカートの導入を前提とした、非財務情報の利用に関する実態調査が行われているが、ごく一部にすぎないこと。また、この領域に関するレビュー論文も作成されているが、そこからも、これらの領域の研究が特に、日本においては十分に蓄積されていないことが明らかなった。これらのことから、実証的な研究の役割が、非財務1青報の利用に関する研究において、比較的大きいことが判明した。そこで、研究課題に関する実証研究を行う前提として、管理会計研究全般における実証的な研究の研究動向を調査した。特に欧米文献における、実証的な管理会計研究の動向について、外国雑誌に掲載されたレビュー論文に基づいて、検討を行った。その成果の一部は、拙稿「外国雑誌における実証的な管理会計研究の検討」『同志社商学』第59巻第3・4号、として公表を行った。これらの検討からは、特に郵送質問票を活用したデータ収集では、回収率の減少により、データの信頼性が低下していることや、回収率の低下に歯止めが、かからないなど、方法論自体の限界が指摘されている。したがって、実証的な方法論を用いる際には、これらの問題点をどのように克服するのかが、課題となっている。もちろん、大量サンプルデータによる実証的な研究を否定するということではないが、実施に当たっては、様々な課題を克服しなければならないことが、明らかとなった。次年度以降は、本年度明らかになった課題に注意しながら、実証的な研究を行うこととしたい。
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