本研究の第2年度は、前年度の研究を基礎に中国の会計研究者との交流を強化することが課題となっていたが、これはほぼ計画通り、実施できた。大学の冬期および春期の休暇を利用して中国を訪問し、上海の復旦大学、社会科学院、北京の北京工商大学、中国社会科学院、天津の天津財経大学、湖南省の湖南大学、湘潭大学等の先生達と交流ができた。とくに湖南大学、湘潭大学では、「日本的経営と企業の社会的責任」と題する講演を行い、大学院生や先生方との研究交流が実現した。また現地を訪問することによって関係文献や資料も収集でき、湖南平和堂および北京松下ブラウン管工場のヒアリング調査も実現した。 現在の胡錦涛政権が提唱している「和諧社会(調和化された社会)」と「科学的発展観」が昨年の17回共産党大会で承認され、中国ではバランスのとれた社会の確立に向けて本格的に動き出した。これに対応して環境問題や企業の社会的責任などにも関心が寄せられることが多くなり、会計学関係の領域でもこの様な方面の論文が登場するようになってきた。またハイアールや宝山製鉄などの中国の大企業、さらに中国に進出している外資企業においても環境報告書やCSR報告書が作成、公表されるようになってきた。持続可能な発展が重要なキーワードになってきたのである。 こうした中国の社会関連会計の現状や動向については、日本社会関連会計学会において組織されたスタディグループの中でも議論し、その成果の一端は日本会計研究学会で報告した。また中国との比較を意識しながら、社会関連会計の基盤となる現代企業の社会性やその会計的展開の一つである付加価値会計の意義と内容を京セラのアメーバー経営を取り上げて論じてみた(裏面の研究成果参照)。
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