(1)少子高齢化の制度設計に関わる問題については、その研究成果を著書『年金問題の正しい考え方』において発表するとともに、韓国中央大学校における第三次社会保障国際学術大会など内外の学会等で報告した。その理論的な主論点の一つとして、年金制度の持続可能性は(a)年金財政均衡条件と(b)個人収益率条件とに依存しているが、この2条件はお互いに対立しており、両者を同時に満たすためには、税支援拡大方式しかないことを明らかにした。 (2)公共哲学と規範的社会理論の問題については、第一に、現代リベラリズムの理論構図における基礎づけ主義的特性が、もともと「リベラリズム」が有していた寛容という価値と対立する結果に至ってしまう理路を明らかにし、第二に、平等主義的配分原理と人々の合理的選択行動との関係を考察して、「公正な配分原理」の理論を構築する作業を進めた。後者のテーマは、平等という価値をめぐる従来の規節的理論を批判的に検討したうえで、「公正」という価値のもとに平等主義を位置づけることを試みており、新しいタイプの平等理論の提示を目指すものである。 (3)公共社会学の構想については、「社会学とは何か」という基本問題に立ち返り、人文社会学系の学問を相互に区別するのはその「対象」や「方法」によってではなく、第一義的にはそれが探求しようとする「価値理念」にあり、社会学の独自性は「共同性」という理念を経験的および規範的に探求していることにあると定式化し、さらに共同性をリフレクシブに統御すべき価値として「公共性」を位置づけるという理論化に着手した。
|