今年度は昨年度調査した地区で補充調査をおこなうとともに、図書館利用や高校・大学への進学率など地区を含む地域レベルの資料を収集した。また、近くの教会でキリスト教を信仰している人びとがなぜ信仰するにいたったのかを、参与観察とインタビュー調査をおこなった。これは、タイの基層文化にある精霊信仰がキリスト教を信仰するさいにも潜在しているのかどうか、また信仰ネットワークが個人を媒介するのではなく、家族を媒介とするかどうかを、調べることが目的であった。そのほか、クーイ人の村を幅広く知るために異なる条件下にある調査地を1つ増やして調べた。その村には、クーイ人のみならず、クメール人やラーオ人、中国人が居住している。今後、多民族共存という問題が重要になるが、その条件を考えるうえでこの村はきわめて重要なケースであると思われる。その村で、区と行政村の概要と村落の仕組み、住民組織、言語使用の状況、婚姻関係、暮らしぶりなどを調べた。他の地区を調査することは、比較することを可能にするため、ひとつのフィールドで調査したことを安易に一般化するのを避けるうえで有効である。 この2か年で調査を精力的にすすめたので、資料の整理は今後営為おこなうことになる。とりわけ、家族の基礎的調査票の整理がまだ不十分なので、これも整理していきたい。
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