最終年度なので補充調査を実施し、以下のことをおこなった。 1 つめは、クーイ人が住んでいるタイ国内の分布と移動経路を整理した。 2 つめは、タイ社会全体のなかでスリン県のクーイ人の歴史的文化的位置づけをおこなった。1657年にチャンパサックから6名の代表者が引き連れてスリンに移動してきたことがわかった。 3 つめは、調査した家族のデータを集計整理した。クーイ人は象を飼育していた家族だけがパッカンと称するカミを祀っている。これはほかの民族には見られないものであった。また、結婚の仕方は夫婦それぞれの民族のやり方を守っておこなっているため、クーイ人の民族性が保たれていること、すべての精霊をヤチュとして崇めていること、家神がいることなどがわかった。 4 つめは、調査した地区の村落構造についてデータをまとめた。クーイ人の村でもタイ政府・官僚はほかの民族の村と同様に住民組織を作り農村生活の整備をすすめていた。 5 つめは、タイ・クーイ人がタイ・クメール人やタイ・ラーオ人と比べて有する特徴について論文として発表した。異民族との婚姻がすすみ言語が消滅しつつあること、結婚の仕方は夫婦それぞれの民族のやり方を守っているため保たれていること、自然霊すべての霊やカミをヤチュと称していて、素朴な信仰をしていることなどがわかった。 これまではクーイ人の研究が少ないためほとんどその姿を知ることができなかったが、今回の調査でその穴を少し埋めることができたと思う。
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