21世紀の日本社会の、もっとも重要な社会的課題のひとつは、人口減少であり、少子化にともなう若年人口の減少は経済成長の低下と、年金制度の破綻を引き起こすことが懸念されている。 本研究は、こうした状況のもと、どのような政策と制度設計が望ましいかを、公共社会学の観点から総合的に検討した。公共社会学とは、公共的に望ましい制度設計や社会のあり方を構想する規範理論を作り出すことを目的とした、新しい社会学である。これまでの近代産業社会は、経済システムも世代間扶養のシステムも人口増加を前提として成り立っており、既存の社会理論では人口減少という事態に対応できないため、これまで研究代表者が行ってきた計量社会学、歴史社会学的な手法を、公共社会学・規範的社会理論という新たな枠組みのもとで再構築することをめざした。 平成20年度は研究課題の最終年度として、「人口減少時代における地域づくり」というテーマを設け、下記の事柄を実施した。 (1)公共社会学や地域づくりの観点からみて先進的な議論を展開している海外の大学や研究者を訪問し、情報収集、意見交換を行うとともに、国内で先進的な取組みを行っている地方自治体の関係者に聞き取り調査を行った。 (2)特に地域のブランド化、町並み保存、コンパクトシティ、農業・景観の維持、交流人口拡大政策など、人口減少問題を考える際により必要になる具体的なテーマについて聞取り調査を実施した。 (3)3年間の成果を、公開講座などの形で報告することで社会に還元するとともに、公刊された研究成果を報告書として執筆し年度末に公刊した。
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