最終年度にあたる本年度は、18年度から19年度にかけて実施した、質問紙調査およびインタビュー調査のデータを分析することが主な研究内容であった。その詳細な内容は近々に観光される研究報告書にまとめているところである。なお、成果の一部は、要望のあった草津市商工会議所の講演で発表させていただいた。 アンケートは、滋賀県下の企業を対象にしているが、滋賀県の地域的な特性が反映した結果になった。高度経済成長以降、県下には製造業を中心に大企業の事業所が急速に進出した。そこで働く従業員には2つのタイプがあり、当初は地元出身者が多かったが、やがて他府県からの移住者が増加した。後者が、都市的ライフスタイルを持ち込み、新興住宅地の新住民となったのに対し、前者は、現役中も伝統的な地域社会との関係を持続している。このことが、定年後の行動や意識の違いとなって現れている。この差異は、企業規模間や業種間にみられる差異よりも大きかった。 定年退職移行期が、ライフサイクルの大きな転換点であることは、アンケート調査からも読み取れるが、インタビュー調査のデータ調査ではこの点をさらに追求している。対象者は現在では安定した退職生活を送っているが、例外なく、移行期にはパーソナリティやアイデンティティのうえで危機的な時期を送ったと語っていた。結論として、危機を乗り越える支援として青年期同様に、セカンド・モラトリアムとも言うべき時間と場が必要なことが明らかとなった。
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