1.「住民」の多様性の検討 山形県戸沢村における住民の多様性/複数性についての整理をした。山村と位置づけられる当該地域は必ずしも閉鎖的な社会ではなく、外部社会からの様々な援助・補助を受け入れながら存続してきたといえる。昭和初期からの地域づくりの歴史をもつ村のキリスト教徒たちと、平成元年からの「村の国際結婚」によりやってきた外国人妻たちに着目して「住民」概念を再検討した。 2.当該地域のキリスト教徒の調査 当該地域の「住民」の多様性を考察する際に重要な集団として位置づけられるのが、村のキリスト教徒たちである。昭和5年の当該地域におけるキリスト教開伝以来、彼らは様々な社会運動を展開して地域づくりを試みてきた。そして地域の宗教的マイノリティである彼らは賀川豊彦の思想を取り入れて長い間地域づくりをすすめてきたことが明らかになった。 3.農村伝道の調査および昭和初期からの当該地域におけるキリスト教徒の役割の分析 キリスト教徒への聞き取りによるナラティヴ資料をデータとして、「よそもの」、「マージナルマン」、「知識人」などの概念を道具として社会変動期における個人の役割の分析も開始した。今後は日本の農村伝道一般に関する史資料も用い、当該地域のみならずより広いコンテクストの中で、この当該地域におけるキリスト教徒の役割をさらに考察する必要がある。 4.「多文化主義」概念の分析枠組みとしての検討 社会科学において近年盛んに議論されている「多文化主義」概念が本研究において分析枠組み足り得るのか検討した。
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