今年度の研究計画として、歴史的環境保全や統合的沿岸資源管理をつうじた地域づくりについての事例研究を実施した。まず沖縄を事例としたもので、具体的には、数年前から調査を継続している竹富島の町並み保全に取り組む住民組織の運営についてと、座間味におけるサンゴ礁を利用するダイビング事業者の経営戦略についてである。今年度はとくにこれまで地域づくりを担ってきた次の世代(20才代後半〜40才代前半)からのヒアリングを蓄積するとともに、これらふたつの地域の経験交流のきっかけづくりもした(2007年3月に座間味商工会が竹富島を訪問)。一方、どちらの地域も、観光客の大量化により地域資源の維持管理に手が回りにくくなっている問題が見受けられるようになってきた。このような状況を乗り越えて、どのように持続可能な観光を創り出すことができるかが、今後、若い世代がこれらの地域に住み続けるうえでの課題であろう。 また、地域住民による歴史的環境保全をとおした地域づくりという関心からは、鳥取県鹿野町の景観形成の取り組みについても事例調査を開始した(同地区は2006年度手作りふるさと大賞を受賞)。まちづくり協議会、町内会、祭祀組織などの住民組織の調査に入っており、本格的調査のための資料収集や当該地域と関係づくりをおこなった。 今年度は、コミュニティビジネスの取り組みということから、農山村におけるグリーンツーリズムについても調査を開始した。そこから、従来のように経済効果について論じるという視点ではなく、グリーンツーリズムの実践をとおして農家、とくに女性達がいったい何を経験しているのかをという視点設定をすることが、この領域における農山村の動向を把握するには重要であることが見えてきた。
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