沖縄をフィールドとした事例調査を継続的に実施した。具体的には、沖縄県竹富島と沖縄県慶良間諸島(座間味村)における事例研究である。その成果として、竹富島の事例では、外部からの開発圧力を受けつつも、状況に対応するために離島における住民組織が再編されていくプロセスについて、慶良間諸島の事例では、地域資源であるサンゴ礁の保全利用をめぐって、観光振興及び自然保護という行政施策と拮抗しつつも地域住民が主体的に社会関係を再編していくプロセスについて分析をし、研究論文を公刊した。 本研究の事例研究は、これまで主に沖縄地域研究を中心に行ってきたが、本年度から中国四国地方の中山間地における地域資源利用と住民組織の再編についても事例を調査した。具体的には、鳥取市鹿野町の景観まちづくりにおける住民と行政による協働の取り組みについてである。また、農村部におけるグリーンツーリズムの取り組みもとりあげ、水俣、阿蘇、安心院など先進地についての事例調査を実施した。 このような事例研究をつうじて、「資源」というものが、社会的にいかに形成されてくるのかを明らかにした。すなわち、本研究の成果として、社会関係のなかにおける資源というとらえ方を明解に打ち出すことができた。そこに資源をめぐる社会的な諸力が関わっていることにも注意を喚起し、本研究のテーマである「権力論的考察」へと議論を導いた。どのような社会関係の下に、事物に資源としての価値が付与され、さらには、その利用をめぐってイニシアティブを発揮するために、どのように社会関係が再編されていくのか、資源の再配置と社会関係の再編について考察を深めることができた。 次年度は、これまでの研究成果をまとめ、学術書として刊行することを目指す。本年度は、そのための基礎的な論文を本年度から次年度にかけて執筆する準備を整えることができた。
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