本研究の最終年度として、そのとりまとめ論文を著書及び雑誌論文として公刊した。 (1)『景観形成と地域コミュニティー地域資本を増やす景観政策』では、コミュニティによって支えられている景観について考察した。そこでは生活規範にのっとって住民組織が形成され、そのような社会的な仕掛けをつうじて地域資源としての景観が維持されていることを竹富島の町並み保全を事例に考察した。これは地方自治学会誌に発表した「地域コミュニティの現在」に関する論考を発展させた考察である。また、景観論においては、近代化及びグローバル化に応じて進展する「単純化(シンプリフィケーション)」をともなう開発に対抗する地域からの開発論についても考察を行い、地域の個性を重視した開発のためには、地域コミュニティに根付いた社会的仕掛けが住民の活動として創案される必要があることを説いた。 (2)「自然の資源化過程にみる地域資源の豊富化-沖縄県座間味および恩納村の事例から-」では、農業・農村および漁業・漁村の多面的機能について、自然の資源化過程の検討をつうじて考察した。すなわち、資源とは「働きかけの対象になる可能性の束」としてとらえられ、同時に、社会関係に応じて資源としての価値が付与されるのである。 (3)鳥取市鹿野町の景観まちづくり(都市計画学会論文)や「コミュニティベースの政策論」(『地域政策入門』第6章)において紹介した鳥取市のまちづくりの各事例をつうじて、住民組織の再編をつうじて新たな時代のまちづくりの取り組みが展開していることを示した。
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