本研究の一般的な課題は、社会学のミクロ-マクロ問題と動学問題にたいする一つの解答の道筋をつけることでみる。特に社会ネットウークに焦点をおき、その理論をミクローマクロ問題と動学問題の観点から発展させようとするものである。平成19年度の実施計画にしたがう成果と今後の課題はつぎのようである。 (1)社会ネットワーク構造の制約のもとの社会過程の理論の吟味。Cook=Emerson=Gilmore=Yamagishiらのネットワーク制約下の資源配分による権力分布の予測、ColemanやMarsdenの均衡モデル、Bonacichの提携ゲーム(解としてコアを採用)の吟味をし、ネットワーク制約下の社会過程を非協力ゲームとしてとらえるアイデアを検討した。(2)社会ネットワーク構造の変動にかんする理論の吟味。ここでは、Holland=LeinhardtからWassermanにいたる確率過程モデルすなはちマルコフ性をもつモデルを批判的に吟味し、より行為理論的な視点から、符号グラフをペア安定性の解をもつネットワーク・ゲームとして扱うアイデアを検討したが、さらにそのモデル化が残る課題である。(3)P*系の計量モデルつまり、Holland=LeinhardtからWasserman=Pattisonにいたる、いわゆる p*系の計量モデルを吟味し、パラメータの推定方法のあいまいな部分、多重ネットワークの場合のモデル、そして外部属性の影響を考慮するモデルを検討した。
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