研究課題/領域番号 |
18530390
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研究機関 | 国際教養大学 |
研究代表者 |
前中 ひろみ 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (80381333)
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研究分担者 |
熊谷 嘉隆 国際教養大学, 国際教養学部, 教授 (00381335)
マーチン シュローダー 国際教養大学, 国際教養学部, 教授 (50381348)
田口 洋美 東北芸術工科大学, 芸術学部, 教授 (70405950)
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キーワード | 野生動物 / 保護管理 / ツキノワグマ / 意識調査 |
研究概要 |
野生動物の保護管理における住民参加の果たす役割の検証を目的として、平成20年度は、青森県においてツキノワグマを対象とした事例研究として、1)ツキノワグマによる農作物及び人身被害状況、狩猟・有害捕獲数などに関する情報収集、2)ツキノワグマ保護管理に関する調査、3)住民の意識調査を実施し、研究最終年度としての収集データの比較分析、結果の検討と総括を行った。 1)青森県におけるツキノワグマの生息域は県中央を南北に連なる奥羽山脈と西側秋田県境の白神山地および下北半島の3つの地域がある。県自然保護課ではクマ出没にっいて各自治体からの報告に基づいてマップを作成しているが、生息数についてはこれまで調査が行われていないため不明である。2)青森県では、ツキノワグマ保護管理に関する権限を各自治体に委譲しており、特定鳥獣保護管理計画は策定していない。3)人とクマの共生を考えるうえでの問題を明らかにするために住民意識調査を実施した。対象とする都市部住民として青森市在住者から500名、山間部住民として田子町、新郷村、深浦町から計500名を無作為抽出し、アンケート用紙を平成20年12月〜1月に郵送で配布し回答用紙を回収し、データ処理・分析を行った。秋田、岩手、青森の住民意識調査データの分析結果から、各県で多少の違いはあるものの、クマとの物理的距離および心理的距離の遠近により、クマとの遭遇経験、情報収集の度合いや情報源、クマに対する態度やイメージ、不安の度合い、駆除についての許容度、保護管理への関心や態度に有意な差異が認められた。都市部住民やクマが身近にいると感じていない人は、山間部住民やクマが身近にいると感じている人に比べて、クマの情報を得ている割合は低く、主にマスメディアを情報源としており、肯定的な態度やイメージを持っている割合が大きく、駆除を必要・許容できる割合が低かった。住民意識の差異は人と野生動物の共生を目的とした保護管理計画の策定と実施を行う上で少なからず影響を及ぼすと考えられるため、慎重に考慮するべきである。
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