本研究は、東北地域で問題化している地域経済の後退に伴う雇用構造の大幅な変化との関連で、新規高校卒業者の就業動向の実状について統計的かつ個別的な事例調査手法による全体的な解明に取り組んだ。東北経済の後退は若年世代の労働市場を狭隘化させ、新規高校卒業者の就職に大きな制約を与え、さらに彼らの就業にも深刻な問題をもたらしている。特に、新規高卒就職者の多くは製造業、卸小売業、サービス業など単純労働に従事し、しかも労働条件も低下を期待し、地域労働市場の底辺に置かれている。このことは、若年世代の仕事および職場への定着を妨げる大きな要因となり、その解決が急がれる。 一方、東北地域で就職志望する高校生を対象としたアンケート調査(今回は、宮城県11高校、約800名)からも、彼らの就職に対する不安が窺える。特に、職場の仕事への対応、人間関係への順応をめぐる不安が高くなっている。しかし、安定した職場への就職、仕事の継続などに対する願望は強くみられる点からも、就職に向けた高校での進路指導、たとえば働くことの社会的意義、事観の形成などをめぐる計画的、体系的な教育的指導法、カリキュラムの編成が改めて重要になってくる。さらには行政機関、企業はじめ地域全体として働く意欲をもつ若年世代の就業機会、安定した就業状況の構築に取り組むことが求められる。同時に、若年世代の安定した持続的な就業は地域経済とともに地域社会の発展に貢献するという観点からも急務な課題である。
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