本年度は、当初の計画通り、青少年の対面的コミュニケーション空間の中から、よさこい系祭りという新種の祝祭空間を選び、活動実態や社会的コンテクストなどの解明を目指して、首都圏において本格的なフィールドワークを実施した。具体的には、出自の異なる3チーム(地域:原宿よさこい連、企業:東京メトロ群青(シーブルー)、学生:早稲田大学“踊り侍")を対象に、練習や祭りの見学、主催者や一般メンバーに対するインテンシブ・インタビュー、質問紙調査などを組み合わせて、活動の実態、参加者の行動と意識、参加者間のコミュニケーションの形態などに関して多角的なデータを収集した。この作業からは、首都圏のよさこい系祭りが、(1)集団的な一体感、非日常的な精神的昂揚、メンバー間のコミュニケーションなど、従来の祭りでも見られる魅力を引き継ぎつつも、(2)いずれのチームも母体となる集団から実質的に独立したクラブチームとしての顔を濃厚に持つなど、組織やコミュニケーションの面では一線を画す特徴を持っており、(3)その結果として、祭り・チーム・踊り子の3者間の結びつきが従来より弱い独特の構造を持つことが確認された。そして、(3)この構造が、祭りに対するチームの関わりやチームに対する踊り子の関わりに大きな自由と多様な参加形態を可能にする一方で、祭りやチームの運営に独特の困難や問題を生み出している現状が明らかとなった。本年度は、さらに、関東圏のよさこい系祭りの実態とよさこいチームの動態に関するデータベースを完成した。このデータベースの分析はいまだ途上であるが、祭りとチームの分布、祭りとチームとの関係などを示す基礎データとして貴重であると考える。
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