理論的研究としては、「間の文化」と関わる機能主義美学の文献を収集し、その読解を通じて「間」の文化が、「あいだ」、「余白」、「不協和による遠近法」、不協和な二項の媒介としての「判断力」、その結合としての「アブダクション」、その社会学的具体化としての「社会学的想像力」、「世間」、その方法的要としての「歴史的特殊性」の観念といった、「間の文化」の社会学的広がりを列挙した。焦点を、従来から行ってきた社会学的想像力の問題と絡め、英語文献、日本語文献を収集整理した。その成果の一部を、想像力と間、想像力と判断力といった問題を要として、整理を行い、ミルズ『社会学的想像力』の評釈的な著作としてとりまとめることをすすめている。とりあえずの確定稿は完成しており、世界思想社編集者との打ち合わせを経て、公刊を目指すことになる。 他方、「吉祥寺の文化」についてのフィールドワークを行った。「若者の街」といわれる吉祥寺のアイデンティティは、無定型な若者のアイデンティティと親近的な特性を持ち、その解明は「若者の間」の解読の一助となると考えたからである。アンテナショップやテナントが集積したような吉祥寺の街並み、その文化は一見したところ「何でもあるがなにもない街」「新しいものが集まっているが個性がない街」などとして仮設的に括られるものであった。しかし、その「都市の余白」(若林幹夫)に浮かび上がる文化のありようは、他所にはない資源的価値をもつものであることが、吉祥寺のランドマークとも言えるいせや社長、およびサンロード商店会の副会長などの事例調査によって明らかになった。 中井正一が活動した広島県尾道市におけるフィールドワークを企画していたが、基礎資料の収集にとどまった。旅費の申請を行わなかったのは、集中講義に岡山県高梁市に行った帰りに立ち寄ったため、交通費などの申請が不要となったためである。
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