戦後の産業化によって家族機能は衰退し、それらの多くが家族の外部へと比重を移した。本研究の目的は、産業化による人口転換(少産少死・少子高齢社会)や、家族の変化(核家族化、家族の個人化)にともなって、死者儀礼や死生観などの精神文化がどのように変化したか、主に家族外部化の実態をとらえることと、加えて、日本および福祉先進国スウェーデンや、アジア圏で急激な少子高齢化が進む韓国の「家族と葬墓のあり方」「死者へのケア」を比較して、日本の「死者儀礼の社会化」に寄与する基礎的研究を行うことである。 平成18年度は、主に「1.スウェーデンの家族変動と死者儀礼の社会化」にっいての研究を行った。まず(1)文献による先行研究の把握を行い、次に家族が守る伝統的な墓と違い、家族にも埋葬場所を知らせない(2)匿名墓地「ミンネスルンド」の調査を実施した。さらに、家族のいない単身者が死亡した場合、収入に応じて生前に納付した葬祭費によって葬儀や墓への埋葬が可能となる死者儀礼の社会化システムを調査した。 また「2.日本の家族の変化と死者祭祀の変容についての研究」として(1)死者と生者の接点-家庭内死者祭祀の多様化をテーマに「意識調査」を実施した。「先祖」を仏壇で祀る伝統的な形態を残しながらも、「近親死者」を身近に祀る「手元供養」が増加した。そこには親族内の連帯にかかわるようなリネージレベルの先祖供養ではなくドメスティックレベル、すなわちR.スミスのいうメモリアリズムがとらえられた。 上記と平行して、韓国の社会変動と葬墓文化の変化に関する(1)文献収集や葬墓施設等の視察(19年度調査のための準備的研究)を行った。
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