本研究の課題は、産業化による都市化や人口転換、家族の変化にともなって、死者儀礼といった精神文化がどのように変化したかを捉えることである。なかでも単身者や子どものいない夫婦のような葬送の担い手を持たない人々の増加による、死者儀礼の社会化を視野に入れて、日本の死者儀礼の社会化に寄与する基礎的研究を行うことを目的とした。その際、早期に産業化を経験したスウェーデンの、家族に依らない葬儀・墓システムと、日本より後に産業化を経験するがアジア圏で急激な少子高齢化が進む韓国における死者儀礼の把握を行った。 1.日本では、90年代後半に登場した継承を前提としない自然志向の墓地「樹木葬」と、家庭内死者祭祀として登場した「手元供養」の実態を分析した。 2.韓国では、社会変動に伴う葬墓制の変化と、ターミナルケア施設としての「臨終の家」等、家族による葬送の担い手をもたない人々の看取りや葬儀システムの研究を行った。 3.スウェーデンでは、家族変化にともなって登場した墓地「ミンネスルンド」と、葬儀や埋葬の社会化システムを研究した。 報告書では、日本と韓国の葬墓制の変化について記したが、今後、スウェーデンを含めた死者儀礼の社会化に関する研究成果を論文にまとめる予定である。
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