研究概要 |
今年度は主として9月にベルリンの州立図書館において,1990年代における国籍法改正に関する新聞記事を,Frankfurter Allgemeine, Suddeutsche Zeitung, Tageszeitung, Frankfurter Runschauといった主要新聞を中心に検索し,ドイツ統一から1999年の国籍法改訂にいたるまでの国籍法をめぐる政界における論争を跡付けた。また,必要に応じて連邦議会や連邦参議院の議会議事録,議会資料を当たり(これも州立図書館所蔵),国籍法改正提案や国籍法をめぐる議会における論争を直接当たってみた。国籍問題が政治のテーマに上ってきたのは1993年,統一後の極右勢力の台頭と,庇護権問題が論争のテーマになってきた時期,社会民主党や緑の党が二重国籍を求める提案を始めてからであった。それを受けて,政権与党(キリスト教民主/社会同盟,自由民主党)の方でも,帰化を促進する法律改訂を議論するようになる。興味深いのは,この時点でキリスト教民主同盟内から,属地原理の導入が提案されていることである。1998年の社会民主党/緑の党の政権が誕生し,国籍法改訂提案が出されると,キリスト教民主/社会同盟の反対運動(署名キャンペーン)が開始されるが,そこで主たる争点は二重国籍であり,属地原理の導入に関しては一部を除き強い反対は出されていない。与野党を含め,外国人をドイツ社会に「統合」するという必要性に関しては,かなり広範な合意を得ていたようである。今後は,この外国人の「統合」ということに対し,それぞれの政治勢力がどのようなヴィジョンを持っていたのかを検討する。 なお,今年の研究成果は,昨年度での調査の成果である。
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