"日本"という単位・枠組みで多くのことわざ辞典類が編纂されているが、実は市町村などの行政単位で、あるいは"文化圏・生活圏"といった単位ごとに「地方(独特の)ことわざ」は存在する。本研究は、地方のことわざを蒐集し記録するだけではなく、蒐集したことわざが各地の"文化圏・生活圏"における個別の習俗規範、生活の知恵などを分析するための基礎データとなることを考察、理論化している。 社会調査においては、第一に、各都道府県や市町村単位の図書館の"郷土資料コーナー"に現存する「地方のことわざ」に関する文献資料を蒐集し、統一した文字データ化をしている。今年度は、九州、四国、中国地方において百を超えるその地独特の文献資料を蒐集し、文字データ化してきた。今後順次全国各地を回って「日本全国・地方別ことわざ集」を編集、刊行する予定である。 第二に、図書館司書、郷土史家、民俗学者、各研究会や学会員、各地区会・老人会・婦人会員、小中学校の先生方などに次のような依頼、アピールをしている。(1)すでに文献資料があるところでも、それらを基礎資料として、さらに記述されていない「地方のことわざ」の類句などを発掘することが急務である。(2)記述されていない「地方のことわざ」について、その口頭伝承者やことわざに詳しい方、会などの情報提供をしていただきたい。例えば、一人で数百句ものことわざを記憶している被調査者にも出会っている。九州、佐賀県厳木町天川の男性、熊本県菊池の男性、兵庫県丹波篠山の男性などである。方言による独自性ではなく、その地独特の句がほとんどである。(3)直接訪問しての聞き取り調査により新たな句を記述しているが、地元の方にしか分からないこともある。そこで地元の方に「地方のことわざ蒐集」の社会調査を依頼したい。 今秋には「日本ことわざ学会」が設立される予定である。学会の分科会としてもこうした研究を運動化したいと考える。
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