ことわざは、どのような種類と数があるのかについて精密な数字は挙げ難い。しかし、種類を類別する一つの指標は提起できる。すなわち、第1は、いわゆる辞典類に載っている<既成の(伝統的な)ことわざ>、第2に、「ことわざ創り調査法」により新たに創作された<創作ことわざ>が挙げられる。そして、第3に、辞典類に載っていない、筆者が名付けた<郷土のことわざ>がある。 実は、第1の<既成の(伝統的な)ことわざ>は、その多くが作者、出典が明らかな句なのである。ところが、行政的な都道府県や市町村といった単位ではない、例えば、ある川の流域とか、各地で呼称されるせいぜい100世帯以下の<ムラ>(或いは、<ブラク>、沖縄では<シマ>)などの(日常生活)文化圏ともいえる単位で、何時かは不明であるがその地の先人であろう名も知らぬ誰かが創った、その地独特の第3に挙げた<郷土のことわざ>が存在するのである。 ことわざは、「言の業」であると共に「事の業」でもある。「事の業」とは、ことわざが、人の心・行動、相互作用、社会現象、文化事象、自然現象などの「事」を叙述(あるいは記述)しているという意味である。故に、そうしたことわざをデータとして、ある特定地域、あるいは生活文化圏の社会意識や社会規範・規制、社会的性格、常識などを分析できるとしているのが本研究の主意である。 このために、まずは<郷土のことわざ>の活字にされている資料を蒐集して、独自のマニュアルを作成して文字データ化している。本年度は、夏に北陸三県、12月には中部、紀伊半島などの<郷土のことわざ>資料を蒐集した。そして、これまでに蒐集した資料も含めて、文字データを業者に依頼して作成している。その他の支出は、関連して、コピー代やU S Bメモリーの購入である。
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