研究概要 |
前年度の神岡鉱業に続き,直島製錬所,小坂製錬所でのヒアリング調査を行い,銅と貴金属を中心とする金属リサイクルの展開過程について,知見を得た。とくに地域的な連携と企業系列ごとの連携の関係を知ることができた成果は大きいと考えられる。鉄,鉛,銅など材質によるリサイクル状況の違いとそれらの相互関係,近年の状況変化など,まとめにあたって注意すべき点も明らかになってきた。並行して,環境対策や地域の他産業との関係など,地域社会との関係についても調査を進めた。北九州での予備調査もあわせて,4地域がそれぞれに公害の歴史を経ていることも明らかになってきた。リサイクル業への転換は必ずしも環境対策を目的とするものではないが,この転換の経緯を見る上でも,歴史的視点が必要だという認識を新たにした。この点でも各地の事情をほぼ把握できたので,次年度,各地の現地調査を重ねることで,比較検討を行うための準備ができたと考えられる。環境対策に関連して,カドミウム問題についての調査も進めている。神岡鉱山でのイ病被害者団体等と協力しての発生源対策は,35年以上におよぶ歴史を有しているが,その成果の重要性は近年とくに高まってきた。こうした対策の進展の一方で,農用地のカドミウム汚染基準やカドミウムによる健康被害の認定をめぐる議論には,遅れも見られる。こうした「ねじれ」の継続は社会学的にも興味深いところである。別掲の論考の中でも紹介と考察を行ったが,今後とも,調査を続けていきたい。
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