(1)本年度は研究開始の初年度であり、これまでの研究成果のフォローとともに今後の調査研究の可能性の設定に主眼を置いた。 (2)調査対象を私鉄産業に設定し、中国地方においてリーディングな位置を占めるA社の労使に対する調査研究を実施することとした。 (3)同社に関する筆者を含む先行研究の成果を整理し、今回の研究の焦点を(1)非正規社員(契約社員)の組合員化による雇用条件をめぐる労使関係の変化、(2)および職場における現場協議制の実態把握と設定した。 (4)調査研究を通して、(1)に関しては以下の点が明らかとなった。 a)同社においては近年、新規採用は契約社員に限られており、その結果、契約社員が質量ともに従業員中の基幹的存在になってきている。b)契約社員と正規社員の労働条件は異なっているため、就業の仕方、職場の人間関係などにさまざまな問題が生じており、その解決が経営側にとって大きな課題となってきている。c)労働組合にとっても、同一組織内に労働条件の異なる契約社員と正規社員を含んでいることによる組織運営上のさまざまな問題が発生しており、その解決が大きな課題となっている。 (5)(2)に関しては以下の点が明らかとなった。 a)上の諸問題は、実際に仕事が行われる職場において特に日常的な軋轢となって現れており、現場協議制の内容が大きく変化しつつある。b)現場協議には多大の課題が持ち込まれているが、解決と未解決の諸問題が複雑に絡み合っている。 (6)以上から、次年度以降、更に調査研究を継続することによって、この重要な研究課題の解明に努めていきたい。
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