社会から排除されつつあるホームレスを、再び社会に包摂していくための政策を引き続き研究した。ホームレス対策に積極的に取り組む自治体における自立支援施策の現状も比較考察した。 それと同時に、男らしさとホームレスの研究を進めるために、日本における男性史研究を振り返った。明治期以後、男らしさを引きずってその期待と重圧の中で生きてきた男性像を探った。 ホームレス経験、生活保護受給経験のある男性へのインテンシブはインタビュー調査を実施し、家族との関係史、結婚、就労の経験、アルコール、ギャンブルなど、各種アディクションの経験を聞いた。とくにアディクション関係では、その問題から受けた影響、それらを一時的に乗り越えた経験などについて、詳しく聞くこととなった。比較のために、一部女性ホームレスのライフヒストリーをも調査検討した。 ホームレス経験者が社会の中に再参入するためには、安定した役割を担うことが重要なポイントである。そこで、地域社会における防犯活動の調査を実施し、地域防犯のNPO活動において、ホームレス経験者が就労できる仕組みを作ることができないかどうかの検討に着手した。 ホームレス経験者は、日本の現代史における男性像のモデルから一種外れていく人生航路をたどっていく。その人生の軌跡から、成功者にはみられない、男らしさのしがらみにとらわれない生き様や人生の新たな意味を読み解くことが可能である。こうした解読作業は現在継続中である。 国際比較のために、スウェーデンでの調査を実施する予定であったが、今年度に実施できなかった。これは次年度の課題の一つとして取り組みたい。
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