一般に移民は祖国とのつながりや、母国からの延長として捉えられることが多いのに対し、移民第二世については、「祖国」というのは一つのシンボルにすぎない。ブラジルの日系二世・三世の特殊な問題として、ブラジルで生まれ、成長の過程で両親などから日本の文化や習慣、場合により日本語も教えられている。このような彼・彼女らのアイデンティティはどこにあるのだろうか。現在日本におけるブラジル人人口は30万を超えており、その一つの特徴としては、19歳未満の数が、全体の在日外国人の中でも、多いことである。日本に在住する外国籍者は、2005年12月現在、200万人を越えているが、そのうち、13%(約27万人)が19歳未満である。一方、在日ブラジル国籍者の22%(約6万7千人)が19歳未満である。 本調査では、この日系ブラジル人の子どもが日本において、母語とアイデンティティの保持がどのように教育と関係しているかに注目している。現時点では、この子どもの多くは、ポルトガル語が母語であり、ブラジルが祖国であると一般的に認識されている。しかし、この傾向も徐々に薄れてくると予測ができる。 18年度は、在日ブラジル人子弟の比較研究として、ブラジルにおけるエスニック学校9校(日本系6校、スペイン系1校、ドイツ系1校、スイス系1校)を対象に調査を実施した。調査期間は2007年3月5日〜31日。ブラジルにおけるエスニック学校では、それぞれの学校の特徴はあるが、全体的にブラジル社会で通用する一流のブラジル教育を目指しており、その中で日本やドイツなどの文化・言語を付け加えるような形でカリキュラムが組まれている。ここでは、日本語やドイツ語はプラス・アルファの教科であり、日系・ドイツ系の子どもなどに祖国への帰国を前提とする教育ではなく、ブラジル人としての教育に重点がおかれている。
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