在日ブラジル人の一つの特徴としては、19歳未満の数が、全体の在日外国人の中でも、多いことである。ブラジル国籍者は31万人に達しており、22%(約6万7千人)が19歳未満である。なお、9歳未満の子どもに焦点を当てると、在日ブラジル人人口の15%(約4万8千人)がその年齢にあたる。ほとんどが日本の小・中学校で教育を受けている、またはこれから受けるだろうと推測できる。そのなか、日本学校での様々な問題を抱える子供が圧倒的に多いことは事実である。 しかし、すべてのブラジル人児童・生徒をひとくくりにして教育の問題を論ずるのは妥当ではない。子どもの日本語能力のレベルや日本社会への適応の差は大きい。また、親の日本滞在歴、就労の状況や生活の安定度により、子どもの教育に様々な影響が及ぼされているのである。 一方、在日ブラジル人の子供が直面する様々な問題にもかかわらず、日本の大学や専門学校に進学した若者が徐々に現れているのも事実である。本年度は、日本で高校以上の教育を受けている在日ブラジル人の若者を対象に調査を実施した。日本国内調査は、静岡県、愛知県、東京でインタビューを行った。また、比較のため、日本の学校で勉強をした経験があり、ブラジルへの帰国後、現地の大学に進学した若者への調査を実施した。ブラジル調査は、2006年12月にパラナ州でインタビューを行った。ここで、彼・彼女らがどのような問題に直面してきたか、またどのように乗り越えてきたかに焦点を当て、在日ブラジル人第二世代の現状を考察・分析した。また、本人の自己意識(アイデンティティ)から、彼・彼女らの日本社会への適応、そして今後どのような生活を目指しているのかを紹介した。
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