平成18年度は、子ども虐待への対応における家族介入的方法をめぐる以下の諸問題点につき、主として文献レビュー、理論的検討を行った。 (1)児童相談所が行う一時保護、立入り調査等の際における警察の援助要請をめぐる問題 2004年の改正児童虐待防止法では、第10条において「児童相談所長は第8条第2項の児童の安全確認又は一時保護を行おうとする場合において、これらの職務の執行に際し必要があると認める時は、当該児童住所又は居所を管轄する警察署長に援助を求めることができる」と規定している。しかし警察の協力は玄関の開錠のみにとどまり、住居への立入りは児童福祉司のみで行わねばならず、虐待親が刃物等を携行していて危険な場合が多い。イギリスのように、さらに踏み込んで警察の協力を要請すべきかどうか慎重に検討すべきである。 (2)家庭裁判所の一層のコミットメントと司法的対応の強化をめぐる問題 家庭裁判所のコミットメントは現状では小さいと言わざるを得ず、児童福祉法28条申立、および親権喪失宣告申立の事案につき検討と承認を行うのみである。アメリカのように、子ども虐待への対応の全過程での家庭裁判所の監視とチェックが必要かどうか、慎重に検討すべきである。 (3)親子分離後の児童養護施設への入所をめぐる問題 日本では親子分離後の処遇は、圧倒的多数が施設入所である。しかし虐待を受けてきた子は親密な人間関係についての問題を抱えている場合が多く、集団生活を営み特定の個人との親密な相互作用が保障されにくい施設はこのような被虐待児の適切な受け入れ先とは言い難い。受け入れ先の大半が、里親であるアメリカやイギリスの状況と対比しつつ、慎重に検討すべきである。
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